●絶品のピロシキ、ボルシチ、エトセトラ。ロシア料理の老舗「バラライカ」
突然ですけど、私にはあるレストランにまつわるちょっと不思議な記憶があります。
たぶん、まだ4、5歳の頃でした。私は両親と3人、薄暗いロシア料理の店で食事をしていました。いつものようにさっさと自分の食事を終えた私は、店の中をウロチョロ探検!当時はおおらかな時代で、子供がそんなことをしても目くじら立てる人はいませんでした。
そうこうするうちに店の一番奥に急な階段を発見。で、そ~っと上ってみました。上の階は意外にも明るく目の前には西洋風の家具。と、「コツ。コツ。コツ」 ゆっくりとした靴音が聞こえてきます。現れたのは黒い髪を頭のてっぺんに巻き上げ、ウエストの細くしまった黒のロングドレスのおばあさん。おばあさんはそんな格好をしているのに、顔はどう見ても日本人。彼女はそれから家具の引き出しをすーっと開けて、中に何かをゆっくりと仕舞いこみました…。
何か怖くなった私はそのままそーっと階段を降り、狐につままれたような気持ちで食事中の両親のテーブルに戻りました。
「あのおばあさんは一体誰なんだろう…?ひょっとして、年を取ったメアリー・ポピンズかしら?うん、そうかもしれない。年を取って動けなくなって、あそこに隠れ住んでるんだわ」
くらくらした頭で今考えるとそんな荒唐無稽なことを想像していました。
さて、またまた前置きが長くなっちゃいましたけど、今回ご紹介する店は、私にとっての長年の謎の生まれたロシアンレストラン、北野坂にある「バラライカ」です。
ちなみに、この店は私の両親が婚約時代にデートによく利用し、その後結婚して私が生まれてからも家族で何回も通っていたところです。
現在は北野坂にある「バラライカ」も、阪神大震災以前は生田新道南に長年店を構えていて、神戸のロシア料理店の草分けとして有名でした。しかし、震災で他の老舗レストラン同様、大打撃を被ります。老舗ほど建物古いですからね。震災後に3代目オーナーはこの北野坂に面するテナントビルの3階で店を再開。他のどこでもなく北野坂を選んだ理由は「いくら有名な店でもポツンと離れたとこじゃ人は流れてこない」からとのこと。
この判断、絶対正しかったと思います。この写真を撮影した時はもうランチタイムのオーダーストップ後だから客が引けていますが、それまでは全席埋まってましたもの。特に客層は若い女性の二人づれが目立っています。
メニューの見開き。ロシア文字って何かかっこいいです。
「ボルシ」いわゆるボルシチです。
ここのはまったく脂っけのない牛のすね肉を使っていると、私は思います。それをホロホロになるまで煮込んでいます。スプーンでも崩れるくらい。崩れるとコーンビーフみたいに繊維状になって、これがまた上に乗ったサワークリームと溶け合って、おいしーーこと!
このピロシキ以上に美味しいピロシキを私は知りません。まずそのしなやかで強い弾力。噛むたびに押し戻してくる感じです。そして酵母のふくよかな香り。揚げているはずなのにまったく油っぽくない。(一口食べた感じ、写真をクリックしてあなたも味わってみてください。・・・・どうです?最高でしょ?え?わかんない。そりゃそうだけど、それは残念。ぜひ食べに行ってみて!)
こんな紙ナプキンのたたみ方、懐かしいですね。
チュールヌイ・フレップ、黒パンです。これもピロシキ同様、独特の弾力性があります。同じ人が作っているんでしょうか。そして、どこかで味わったことのある懐かしい味。「何だっけ、これ、この美味しいこれ、絶対知ってるこれ」とずーと考えていたのですが思い出しました!「ふすま」です。あの和室にあるふすまじゃないですよ。ブランです。小麦の表皮で「オールブラン」とかいってよく売られている、あれです。芳ばしいいい香りがするんですよねーこれが!
さあいよいよ!かのカツレータとガロヴィツイ。ん?ロシア語全然わかんない。日本語訳するとつまり、ロシア式のハンバーグとロールキャベツだそうです。でもこんなにサワークリームとソースがかかっているからどっちがどっちか、これまたわかんない。
エイや!お、右がロールキャベツでした。ソースがキャベツを伝って今にも滴り落ちそうです。うーん急いでパクリッ。見た目と違ってあっさりとした味わい。ミンチ、かなりいい肉使ってますね。上品です。(見た目と違って。←くどい?)
こっちはカツレータ。表面をカリカリに揚げ、その上にとろーりソース。いや、参りました!
最後はロシアンティーで締めくくり。砂糖ではなく紅茶にジャムを入れるのが日本ではロシアンティーだとされています。(でも・・・トルストイの小説に角砂糖をかじり、カップからソーサーに紅茶を移しかえて飲むご婦人が登場していましたが・・・・ということは角砂糖もありなのでは?)ま、いいや。ところで、ここのジャムは特製、バラの花びらのジャム。素敵でしょ♪お店でも売ってましたよ。
何度もロシアを行き来しておられる(に違いない)オーナー。アエロフロートのポスターが貼ってありました。
今はこのテナントビルの3階に入っています。
実は今回、オーナーにあのメアリー・ポピンズのおばあさんのことを尋ねてみたんです。あのおばあさんは結局は単に、オーナーの伯母様だということがわかりました。
あーあ、なんだか夢から覚めちゃったみたいです。世の中、聞かないほうがいいこともあるんですね。
それでも、バラライカに行くと、何だかいつも少女時代特有の不思議な感覚とか気持ちとかを思い出し、懐かしい美味しさと雰囲気にしみじみ満足してしまう私でした。
早坂
神戸市中央区中山手通1-22-13 ヒルサイドテラスビル3F
TEL 078-291-0022
営業時間 12:00~14:30,17:00~20:30
休日 火曜日(祝日の場合は翌日)
ボルシセット・・・・・1575円
ボルシ
ピロシキ(2個)
コーヒーor紅茶
カツレータとガロヴィツイ・・・・1575円
チュールヌイ・フレップ・・・・315円
コメント
家族でこれる店が
自分たちの親がデートで使った店なんて
とっても素敵です
自分もそんな店になるようにがんばりたいですが
いいですよね そんな店があるなんて
Posted by: 竹 | 2006年6月29日 16:38
昔は“ファミレス”と言うものがなかったのでかえってよかったのかもしれませんね。小さいときからシェフや竹さんのようなちゃんとした板前さんの作ったものを食べることが出来たわけで、味覚の形成期にそれって大切だと思うんです。
のんびりした時代で、よその人のテーブルに子供がのぞきに行ってもニコニコ話しかけてもらったりしていましたね。今じゃ想像も出来ない・・。
今は“お子様づれお断り”と言った雰囲気の店も増えて、お母さんお父さんのご苦労がしのばれます。
Posted by: 早坂 | 2006年6月29日 22:59
元町に行った時必ずお店の前を通って某本屋さんに行きます
いつも横目で見ているお店です
思い出のあるお店なのですね
今度は横目で見ていないで入ってみたいです
Posted by: NATURAL | 2007年1月14日 09:04
☆NATURALさん
ココは神戸っ子なら必ず知っているといってもいいお店なんですよ~。
本当に素朴な、心を込めて作った本物のロシアの伝統料理を食べさせてくださいますよ。
Posted by: 早坂 | 2007年1月14日 09:54
私も渋谷ロゴスキーは子供の頃、親によく連れてきてもらいました。
冷戦時代の頃だっただけに、ソ連の広報誌も置いてあるそのお店を
KGBと関係あるアヤシイ店だと思ったものです(笑)
ソ連に縁もないのにロシア料理のお店になぜ来てたのか、不思議でした。
その重厚な感じのロゴスキー渋谷本店は数年前に閉店してしまい、
今はべほまずんさんの記事にあるような店舗だけになっています。
Posted by: ロレンス | 2007年1月18日 23:06
☆ロレンスさん
子供の頃よく連れて行ってもらったということは、私と同じ体験をなさっておられますね。
東京に今1軒。と言うことはロシア料理のお店というのは、貴重品?バラライカはメチャクチャ美味しいですよ。
神戸は革命のときに逃げてきたロシア人が結構多いのですが、ロシア料理店というよりもチョコレートやケーキのお店をされてますね。
で、とにかく日本に2店舗発掘!!ですね。
Posted by: 早坂 | 2007年1月19日 10:58
初めまして。ちょっと調べものをしていて、ここを見つけたんですよ。KABAさんの所にコメントをされている方でしょうか?バラライカは変らない味と雰囲気はうれしいことです。ランチはお安いですね。このビルに治吉(はるきち)がやはり震災でここに移ってきていて、時々ランチしてます。これからも楽しみにしてますね。
Posted by: あんこ | 2007年3月14日 08:51
☆あんこさん
はじめまして!あんこさん。そう、そう、KABAさんとこ、よく遊びに行かせていただいております(^O^)
治吉(はるきち)ですか。すてきな名前のお店!私はなぜだかこのビルの前を通るとバラライカの看板しか見ていなくて・・・・(><)だめですね~~。ちゃんと他のお店も見なくっちゃ!
ということは、あんこさんとはエレベーターで知らずにすれ違っていたこともあったかも(^O^)
バラライカのメニューは全部私好みなんですよ~。素朴で飾らなくって手作りの美味しさ。私にとってのおふくろの味で~す。
また遊びに来てくださいね♪
Posted by: 早坂 | 2007年3月14日 09:19