●和菓子の老舗、神戸熊内「つるや」
梅雨に入ったはずなのに今日も神戸は真夏日です。
涼やかな夏のお菓子を求めて近所の和菓子屋さんに立ち寄ってみました。神戸・熊内 京菓子の「つるや」さんです。
「つるや」さんは大正8年創業。
京都の和菓子屋さんに言わせれば「まだ、ややこやおすな~」(標準語訳:まだ赤ちゃんね)ということになるかもしれません。しかしその静かで落ち着いたたたずまいは都会の喧騒の中、ほっと潤いを与えてくれる場所でもあります。
※ところで、やっと写真のポップアップをマスターしました。どこにあるか探してみてくださいね。
舟板でできた古い「つるや」さんの看板。昔は雨に強いからと、こうして舟板で看板を作ったのだとか。でも、震災のときには店もろとも看板も落ちてしまいました。それでも、お店を立て直して必ずや再び掲げようと「つるや」さんご夫婦はこれを大切に取っておられたそうです。
格子戸を開けると色の白い上品な奥さんがにこやかに、でも少しはにかみなが出迎えてくださいます。ガラスケースの中は上が茶席菓子、下はふだんのお茶うけ菓子。
もうこの時点で汗を拭きながらリラックスして「ふう」とため息。
「今日もお暑いですねぇ」
「ほんま、梅雨やゆうて毎日よう晴れますねぇ~」
今ではトンと交わさなくなったこんな当たり前なのんびりとした会話も、ここでは気兼ねなく口にすることが出来ます。
お菓子の世界はもう夏です。涼しげでしょ?
落雁(らくがん)で清流をあらわしています。鮎、水に浮かぶ花や葉っぱ、河原の石。箱庭のよう。まるで小宇宙ですね。
水の渦を表しているのは雲平(うんぺい)と呼ばれるお菓子。
私は子供のころほかの誰も食べようとしないこの雲平を喜んで食べて、味がしなくてがっかりした記憶があります。それでもまた忘れて、これがお菓子の箱に残っていると「ねえねえ食べていい?」って食べてまたがっかり。経験から何も学んでない?ええ、今でも忘れて食べちゃいそうです。
本当はつめたく冷やしたくず餅でもと思っていたのですが、ついつい目移りしてお抹茶でいただく茶席菓子もいくつか買ってしまいました。これは「撫子」。なめらかで伸びのいい求肥(ぎゅうひ)のなかに白餡が入っていました。
その鮮やかな色にビックリした「富貴草」。てっきりチューリップかと思いました。それとも完熟トマト?ってマサカね。きっと白い萩焼の鉢に盛ってお客さまにお出ししたら、マンネリ化したおもてなしにちょっと趣向を添えることになるんじゃないかな。中は黄味餡です。
お次は「草の露」。3ミリくらいの角切りにした寒天を露に見立てています。中は粒餡。
すみません。「すはま」が出てきちゃいました。実は「すはま」が店に置いてあって私がそれを買わないということは、まずありえません。大豆の粉を水あめで固めたお菓子です。こんな上品な形のものだけでなく、ただ大豆色の棒状になったものを切り分けて食べたりもします。
子供が口の周りを粉だらけにしてこれを頬張っている姿はまるで海の砂でも食べてるみたい。だから洲浜(すはま)って言うのかな?
ところで以前にはやった「たれぱんだ」。好物は「すあま」でした。私はずっと彼の好物は「すはま」だと思って、ちょっと気にしてあげてたんだけどな!もう見捨てちゃおっと。
さあ、ここからやっと夏のお菓子の登場です。餡を葛で包みさらに桜の青葉を巻いた「くず桜」。すきとおった葛をとおして中の餡が見え、涼しげ~~。冷やして食べたらチュルン。中もこし餡でトロン。桜の香りがふわっ。これからの季節、常備品になりそうですね。
ところで今回の掘り出し物は、この「麩餅」。とにかくこれは日持ちがまったくもってしないので、採算重視のお店ではまず作ってないんじゃないかな。
よもぎの生麩で出来たお餅です。生麩は小麦粉の粘り成分グルテンを練ったものです。米のお餅にはない独特の粘り気とふわふわ感があります。それにこし餡をいれて笹の葉で包んであります。
笹の葉を解くと、まるで朝露のように水がしたたり落ちました。いい感じ。
ムッチュ。あーしあわせ。もっと買っておけばよかった。
ところで実は「つるや」さんの立派な看板、ご覧のように陸橋の陰になってほとんど見えないのです。震災前はもう少し東のいい場所にあったのだそうですが、今はこんな形になってしまいました。
この「つるや」さんの奥さんから少しさみしいこともお聞きしました。お饅頭屋さんというのではなく本格的な和菓子屋さんと呼ばれるお店は、神戸ではつぶれたとは聞いても新しく出来たという話は一切聞かれない、と。
どうか「つるや」さん、いつまでもいつまでも美味しい「麩餅」作ってください。「すはま」も「くず餅」も、ぎゅうひのお饅もとってもおいしかったです。
早坂
コメント
和菓子も心なごみますよね
洋菓子におされて和菓子はパットしませんが
健康的には和菓子もいいのに
Posted by: 竹 | 2006年6月14日 22:14
そうですね~。それに和菓子の季節感。それぞれの季節の変わり目にハッとしたりほっとしたり・・・。のんべんだらりと過ぎてゆく一年にメリハリをつけてくれますね~。
Posted by: 早坂 | 2006年6月14日 23:30